2025年10月30日
求人票の見方と、後悔しない転職活動で注意すべきポイントを解説。
転職サイトに掲載されている、業務内容や労働条件が書かれた「求人票」。見たことがある方は多いかと思いますが、「どの項目も正しく理解できた」と自信をもって言える方は案外少ないのではないでしょうか?
たとえば“月給”と“月収”の違いや、固定残業代の仕組みなどは、転職初心者の方には理解しづらい部分。そこで今回は、正しい求人票の見方や注意すべき点について解説します。また、優良企業を見分けるポイントもご紹介します。
求人票の見方
求人票は、仕事内容・労働条件・会社概要をしっかりチェックすることをおすすめします。
求人票にはいろいろな情報が載っていますが、特に確認したいのが「仕事内容」「労働条件」「会社概要」の3つ。それでは、各項目の概要や見方を説明していきます。
仕事内容
どの求人にも「職種名」が書かれていると思いますが、職種の呼称や定義は企業によって様々。たとえ全く同じ職種名の求人が並んでいたとしても、業務の中身まで同じとは限りません。だからこそ職種名だけでなく「仕事内容」まできちんと読むことが大切です。
営業職の場合、仕事内容でおさえておくべきポイントは「誰に対して、何を、どう提案するのか」の3つ。
たとえば「新規企業に対して、投資用不動産を、飛び込み営業や架電営業をして提案する新規開拓営業」であれば、新規開拓をするガッツや行動力が必要になりますし、入社後に不動産について勉強する必要があることが想像できます。
「誰に対して、何を、どう提案するのか」を掴んでおけば、仕事内容がイメージしやすくなり、自分にマッチしているか否かも判断しやすくなるはずです。
「未経験歓迎」は本当?応募資格から実態を読み解く
「応募資格」欄では、「必須資格/スキル」と「歓迎資格/スキル」を分けて確認します。
- 必須:これがなければ応募できない、という最低条件。(例:普通自動車免許)
- 歓迎:持っていると選考で有利になるが、必須ではない。(例:マネジメント経験、〇〇業界での知識)
ここで注意したいのが、「未経験歓迎」という言葉です。
もちろん、研修制度を充実させ、未経験者を丁寧に育てようとしている優良企業もたくさんあります。しかし、一方で「未経験歓迎」の裏には、以下のような実態が隠れている可能性も否定できません。
- 研修制度が整っていない:「OJT(On-the-Job Training)」という名目で、十分な教育がないまま現場に放り出される。
- 大量採用・大量離職:誰でもできる(と思われている)キツい仕事で、人の入れ替わりが激しく、常に人手不足である。
【判断ポイント】
「未経験歓迎」の求人に応募する際は、「研修制度」の欄を必ず確認してください。「入社後●ヶ月の座学研修」「専属トレーナーによるOJT」といった具体的な記述があれば安心材料になります。
逆に、研修制度についての記述が乏しい場合は、「入社後の教育体制はどのようになっていますか?」と面接で具体的に確認することが不可欠です。
労働条件
労働条件は、給与、勤務時間、勤務地、休日休暇、福利厚生など「どんな待遇・環境でその仕事を行うのか」を示した項目です。
基本的には読んだとおりに理解すればOKですが、一部理解しにくい部分や、勘違いしやすい部分があるので注意が必要。その箇所については次章「労働条件を見る際の注意ポイント」で解説いたします。
また、稀に「求人票に書かれている内容と、実際の労働条件が違っていた」というトラブルが発生することがあります。求人票の内容だけを信用するのではなく、クチコミサイトや面接の場も活用して、労働条件に誤りがないか確かめておきましょう。
会社概要
求人票の最後に書かれていることが多いため読み飛ばしてしまう方も多いかと思いますが、意外と重要なのが「会社概要」。
代表者名、資本金、会社の設立年、売上高、事業所、関連会社などが書かれており、その企業の安定性や職場の風土が読み取れる項目です。
たとえば、設立年が古い企業はそれだけ長く経営を行っているため業界での信頼度が高く、安定している企業が多め。
逆に新しい企業は安定企業とは言えないものの、風通しの良い社風であったり、新人社員でも裁量をもって働ける環境であったりすることが多いでしょう。
また「事業所」の部分に本社以外の住所が書かれている場合、転勤が発生する可能性があります。気になる方は、面接で確認してみることをおすすめします。
労働条件を見る際の注意ポイント

求人票に書かれている労働条件には、初めて見る方が勘違いしやすい“落とし穴”がいくつかあります。間違った捉え方をしてしまわないよう、以下でポイントをご説明します。
給与に書かれている金額は「手取り額」ではない。
まず、最も基本的なことですが、求人票に記載されている「月給●●万円」という金額は、そのままあなたの銀行口座に振り込まれる金額(=手取り額)ではありません。
これは「額面(総支給額)」と呼ばれる金額です。
会社から支給される総額である「額面」から、以下のような社会保険料や税金が差し引かれた(控除された)金額が、私たちが実際に受け取れる「手取り額(差引支給額)」となります。
【額面から差し引かれる主なもの】
- 社会保険料:健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料(40歳以上)
- 税金:所得税(源泉徴収)、住民税(入社2年目以降または前職で特別徴収されていた場合)
一般的に、手取り額は額面の75%~85%程度になると言われています。
例えば、求人票に「月給30万円」と記載があった場合、実際の手取り額は22.5万円~25.5万円程度になる、と見積もっておく必要があります。
【図解イメージ:給与明細の例】
- 総支給額(額面): 449,000円
- 控除合計(保険料・税金): – 107,100円
- 差引支給額(手取り): 341,900円

「月給」と「月収」の違いは?
求人票を見ていると、「月給」と「月収」という言葉が混在していることがあります。この2つは似ているようで、意味が異なります。
月給:毎月固定で支払われる給与のこと。「基本給」に加えて、「役職手当」「住宅手当」「資格手当」など、毎月金額が変わらない固定手当を含んだ金額を指すのが一般的です。

月収:「月給」に加えて、その月ごとに変動する手当も含んだ金額のこと。具体的には、「残業手当(時間外手当)」、「インセンティブ(業績給)」、「通勤手当」などが含まれます。

なぜこの違いが重要なのでしょうか。
それは、企業が給与を高く見せるために「月収例」を大きくアピールしているケースがあるからです。例えば、「月収40万円可能!(月給25万円+インセンティブ15万円)」といった具合です。
この場合、あなたが毎月安定して受け取れるのは「月給25万円」の部分であり、「月収40万円」は、あくまで特定の成果を上げた場合の一例に過ぎません。
安定した収入を重視する場合は、「月給」の金額がいくらなのかを正確に把握することが大切です。
固定残業代がある企業は、残業しても給与に反映されにくい。
固定残業代とは、実際の残業時間に関わらず、あらかじめ固定給に含まれる残業代のこと。
たとえば月の固定残業代が「20時間分」に設定されていた場合、毎月20時間までは追加の残業代(時間外手当)が出ません。
「残業しなかった月でも、固定残業時間分の残業代が支払われる」という利点はありますが、逆に「残業しても給与にはあまり反映されない」というデメリットにもなりますので、求人票で必ずチェックしておいたほうがいいでしょう。
「完全週休2日制」と「週休2日制」は別物
これは、転職初心者が最も陥りやすい「罠」の一つです。この2つの言葉は意味が異なります。
完全週休2日制: 毎週、必ず2日間の休みがある制度です。(例:「完全週休2日制(土日祝)」)
週休2日制: 「1ヶ月の間に、週2日の休みがある週が、最低1回以上ある」制度です。
つまり、「週休2日制」の場合、他の週は週1日の休み(例:日曜のみ休み、第2・第4土曜のみ休み)であっても、法律上の表記としては問題ありません。
毎週土日休みを希望している場合は、求人票に「完全週休2日制(土日)」と明記されているかを必ず確認してください。
【図解イメージ:カレンダーの例】
(完全週休2日制)
1週目:土(休)・日(休)
2週目:土(休)・日(休)
3週目:土(休)・日(休)
4週目:土(休)・日(休)

(週休2日制の一例)
1週目:日(休)
2週目:土(休)・日(休)
3週目:日(休)
4週目:土(休)・日(休)

優良企業か否かを見極めるポイント
前提として、求人票は多くの方からの応募を集めるために魅力的に書かれているもの。そのため社員を大切にしていないブラック企業であっても、魅力的な表現を使ってうまくアピールしています。
では、その中で優良企業を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか。いくつかポイントをご紹介します。
「産休/育休」「有給」「賞与」に、実績の記載があるか
休日休暇欄に書かれている「産休・育休」と「有給休暇」、そして福利厚生欄(または給与欄)に書かれている「賞与」は、制度として存在はしているものの実際には利用されていない、というケースがあります。
「有給取得率●%」「賞与支給実績●ヶ月分」といった表記がある企業は、きちんと利用実績があるため安心と言えるでしょう。
「社員定着率」が書かれているか
社員定着率も、重要な見極めポイントのひとつ。求人票でアピールができるほど定着率が高い企業は、それだけ社員が居心地良く長く働けているということ。
また社員の「平均勤続年数の長さ」をアピールしている企業も、定着率が高い企業と同様、優良企業である可能性が高いです。
「福利厚生」は「社会保険完備」以外に注目
「福利厚生」欄で、「社会保険完備」と書かれているのを見て安心していないでしょうか。
「社会保険完備」(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の4つに加入できること)は、企業として法律上の義務であり、アピールポイントでも何でもありません。これが完備されていない企業は論外です。
注目すべきは、「社会保険完備」以外に何があるか、です。
これらは「法定外福利厚生」と呼ばれ、企業が社員の働きやすさのために独自に設定しているものです。
【注目すべき福利厚生の例】
- 住宅関連:住宅手当、家賃補助、社員寮
- 家族関連:家族手当、育児サポート(時短勤務、託児所補助など)
- 資産形成:退職金制度(企業型確定拠出年金/401k、iDeCo補助など)、財形貯蓄、ストックオプション
- スキルアップ:資格取得支援制度、書籍購入補助、外部研修費用負担
- その他:社員食堂、食事補助、リフレッシュ休暇、保養所の利用
これらの福利厚生が充実しているほど、企業が社員を大切にし、長期的に働いてもらおうと考えている姿勢の表れと言えます。
求人票は「未来の契約書」。見極める力をつけよう

今回は、求人票の正しい見方について、気を付けるべきポイントについて解説しました。
- 給与:「額面」と「手取り」の違いを理解し、「基本給」がいくらか、「固定残業代」の内訳(時間と金額)はどうかを必ず確認する。
- 休日:「完全週休2日制」と「週休2日制」の違いを理解し、最も正確な「年間休日」の日数(最低110日以上が目安)を確認する。
- 実績:「賞与」「昇給」「有給休暇」「産休・育休」などは、「制度あり」だけでなく、「支給実績」「取得率」といった具体的な数字が記載されているかを確認する。
- 危険なサイン:「給与幅が広すぎる」「抽象的なアピールが多い」「通年募集」など、注意すべきサインを見逃さない。
- 仕事内容:「誰に・何を・どう売るか」を具体化し、ミスマッチを防ぐ。
求人票は、単なる仕事の紹介状ではありません。それは、あなたの未来の労働条件やキャリアが書かれた「契約書の予告編」です。
そこに書かれた言葉の表面だけをなぞるのではなく、その裏に隠された「本当の意味」や「書かれていない情報」を読み解く力(=リテラシー)を身につけること。
それが、あなたの転職を成功に導き、「こんなはずじゃなかった」という後悔を避けるための、最も確実な第一歩となります。
求人票だけでは分からない「リアルな情報」を知りたい方へ
ここまで、求人票を読み解くためのテクニックを数多くご紹介しました。
しかし、どれだけ求人票を丹念に読み込んでも、それだけではどうしても分からない「リアルな情報」が存在するのも事実です。
- 「実際の職場の雰囲気は、本当にアットホームなのか?」
- 「上司や同僚はどんな人たちなのか?」
- 「部署の平均残業時間は、本当に書かれている通りなのか?」
- 「評価制度は、実際に公平に運用されているのか?」
こうした「生の情報」は、外から見ているだけでは決して分かりません。
私たち「hape Agent(エイプエージェント)」は、営業職に特化した転職エージェントとして、日々多くの企業と密にコミュニケーションを取り、求人票だけでは分からないリアルな内部情報(社風、残業実態、評価制度の運用実態など)を把握しています。
「この求人票、魅力的に見えるけど実際はどうなんだろう?」
「求人票の見方は分かったけど、自分に本当に合う企業がどれか分からない」
もし、あなたが今そんな不安を抱えているなら、一人で悩まずに、私たち転職のプロに相談してみませんか?
あなたのキャリアプランや価値観をお伺いした上で、求人票の裏側にある情報も含めて、あなたに最適なキャリアをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
まとめ

今回は、求人票の見方について解説いたしました。求人票は、その企業の表面部分にしか触れていない場合も多め。より深く理解するためには、求人の内容をもとに入社後のイメージをうまく膨らませる必要があります。
「ひとりで転職活動をうまく進める自信がない」という方は、転職エージェントを頼るのもおすすめ。転職のプロであるコンサルタントが、あなたの価値観に合わせた求人を紹介してくれます。
特にhape Agentであれば、求人票の内容が充実していることでもお馴染みです。転職活動にお悩みであれば、お気軽に相談してみてください!
この記事の監修者
株式会社マシカク/コピーライター 白井秀幸
人材業界ではリクルートとエン・ジャパンを合わせると約20年経験。コピーライター/ディレクターとして、業界・職種を問わず2000社以上の採用広告制作に携わる。採用HPやムービー、スローガンなど、採用ブランディング構築の観点で企業と向き合い、様々な課題解決を行なってきた。



